「ここなら痕、他の人には見えませんよね。立てますか?」
ふらつく私に優しく差し伸べてくれた手を、私は払いのけた。
「1人で立てる…私の事、怒っているんでしょう?」
「まあ、当時は怒りの感情もありましたけど、憎らしいほど水晶さんの事が好きなんです」
昔の、高校時代と変わらない真っ直ぐな目で見つめられると、幸せだった頃の感情を思い出しそうで、恐い。
「私、極力貴方と話さないからっ」
それから一言も話さずに2人で工房に戻った。
蒼汰と関わらないと決めたは良いが、2人でペアを組む事になった手前、全く会話をしない訳にはいかない。
綾崎リーダーに秋の新作をデザインしろと言われ、2人で協力する事になった。