「なのに英語の成績は平均並みなんだよな。訳するのとかとは別次元らしい」


苦笑を浮かべながら語る柚太。やっぱり幼馴染なんだな、とそれを4人は微笑ましく感じた。

そんな事を言われているとも知らない佐和は自分の好きな子の歌を精一杯歌う。

採点が出る以前に既に誰の目にも結果は見えていた。確実に彼女の勝ちだ、と。

対戦相手である郁人でさえも完全なる敗北を認めていたのだ。


「って、あれ? 何でこんなにしんみりしちゃっているの?」


歌い終えた佐和の第一声。彼女の言う通り、だんまりとした無音の空間。

先程の郁人の時とはまるで正反対の様子だ。

拍手も何もない、まるでそこには自分しかいないような感覚に彼女は襲われそうである。

だがそれもほんの一瞬。佐和がまた言葉を発そうとしたその時には、大きな拍手が彼女を包み込んだ。