旭が歌い終えたその瞬間、ホールは拍手の渦に包まれた。

その中で当の旭は自分に取り憑いていた女性が身体から出て行くのを感じ取ると、

閉じていた目をゆっくりと開け、目の前にいたカップルの方を見つめた。


<感謝シテモシキレマセン>

<オ陰デユックリ2人デ向コウノ世界デ過ゴセマス>

「そうか。転生の時が来るまで、幸せに。こんなに歌が上手かったとは、な。
オレは音痴だからちょっと不安だったけど」


幽霊達はふっと笑い、ゆっくりと消え始めた。

本当はもう少し会話をしたかったのであろうが、未練を果たしたその瞬間から成仏は始まる。

時間が許さなかったのだ。