彼が出て来たとたんにギャラリーから聞こえて来る“昭和”発言。

それを払しょくするかのように体育館全体に響き渡るかのように、怒鳴るのは……。


「昭和昭和うるさい! 平成と昭和を間違えたくらいで何もそこまで……」


眼鏡の向こうの瞳が色々な恥ずかしさでうるんでいる郁人であった。

そんな郁人を佐和がニコニコと出迎えた。郁人が対戦相手になった事に対し、佐和は嬉しそうだ。

楽勝とかそういう意味ではなく、知っている人が対戦相手だったからだろう。


「対戦相手が郁ちゃんで良かった!」


笑顔でそう語る佐和。どんな意味で言ったか定かではないにしろ、郁人はその笑顔に今にも気を失いそうである。