郁人は気持ちを切り替えたつもりでいたが、やはり動揺を隠せなかったのだろう。

右足と右手が一緒に出ていたり、どういう訳か“平成”を“昭和”と読み間違える。

読み間違えに気付いてすぐに訂正はしたものの、周りのざわつきまでは消す事は出来なかった。

里緒は普段は読み間違えないような感じを読み間違えてしまうという始末。

明日の全校生徒の前でのカラオケ対決のプレッシャーが、

こんな所で影響してしまった事を、代表として壇上に登った3人は匡平を恨む。

折角の感動の卒業式も彼らからすれば台無しと言う訳だ。


「良いねえ、初々しくて」


そんな事も露知らず、全ての元凶である匡平は校長と並んで席に座って笑っていた。