里緒は思わず佐和の両手を素早く掴み、真剣な眼差しで佐和に尋ねる。

まるで死人が地から這い上がるような行動だっただけに、咲はやや怯えて震えていた。


「佐和ちゃん先輩!　昨日うちの会長に好きだと言われなかったんですか?」

「うん?　って、言うかなんで郁ちゃんがそんな当たり前の事をワタシに言わなければならないの?」

「…………はい?」

「だってさ。郁ちゃんもユズもワタシが嫌いだったら、
こんな長くワタシと同じ時間を過ごそうとは思わない気がするから。
ワタシもユズ達が好きだから同じ時間を一緒に過ごしたいって思っている」


だから、郁人が自分を好きだと言うのは当たり前の事で。

自分だけではなく郁人は柚太も好きであると言う事。それを佐和は特に深く考えずに里緒に言ってみせた。