「ユゥーズゥー……? 何郁ちゃんをいじめているのかなぁ?」


殺気立った気配を察した柚太が振り向けば。そこには両手に荷物を抱えた佐和の姿があった。

その声は普段からは想像出来ないほどの低音。相当怒っている様子だ。

郁人から手を放し、柚太は必死に佐和に弁解をするもむなしく。


「相手は怪我人! 喧嘩しない約束があったのに……明らかにユズ、喧嘩売っていたでしょ!?」

「いや、だから、その……ご、誤解だって! 郁人も何か言ってくれよ!」


どうやら聞く耳は持たないようだ。郁人も黙ったままで何も言おうとはしなかった。

恐らくは佐和がその場にいる事にも気付かないほど、自分の世界に入ってしまっている可能性が高い。