しかし笑ってばかりなだけが佐和ではなく。

クラスで飼っていたハムスターが、トイレの水に溺れると言う不慮の事故で死んでしまった時や、

飼育小屋で飼われていたウサギが死んでしまった時は誰よりも沢山の涙を流し。

無駄に凄い脚力を男子にからかわれれば、その時の機嫌にもよるが大抵は怒る。

いつか悪い人に騙されるんじゃないかと言う位に素直で、バカみたいに天真爛漫で無邪気。

郁人はそんな彼女に次第に心惹かれてしまっていたのだった。


「……思えば、何も知らなかった僕が君と……ちょっと気味悪いけど“仲良く”しようとした事も、
佐和ちゃんがいなかったらそうしようとは思わなかったんだろうなあ……」


郁人がそれを懐かしむかのようにそう語るのを、柚太は彼を見下ろしながら聞いていた。