「佐和……お前、行きすぎ。どこまで走ったんだよ?」


やって来た佐和に呆れるように溜息を吐き、柚太は言う。

佐和は一言謝罪をしたかと思えば真っ先に郁人の元へと歩み寄る。

逃げようにも逃げる事の出来ない郁人は、佐和から視線を外そうと必死になった。


「郁ちゃん……? 一体何が?」

「バカな話だよな。無我夢中で走っていたら、足ひねったんだと」

「……バカって言うな」


丁度柚太が郁人に追い付きそうになり、郁人の肩を掴もうとした時の事。

突然郁人が体勢を崩してその場にしゃがみ込んだ。

柚太に心配されたくがないが為にすぐに立ち上がろうとするも、左足をひねってしまっていて表情を苦痛にゆがませた。

さすがの柚太もバカにする事も笑ってやる事も出来ず、

とりあえず邪魔になるからと郁人をここに腰掛けさせてから数分。今に至る。