回り出した途端に上下に動き出す白馬に、まるで小さな子供のように無邪気な笑顔を浮かべる佐和。

柚太の事は後から聞こうと思ったのだろう。

それとは正反対にとある感情が渦巻いたままの郁人は、暗い表情のままであった。

佐和と目があった時は、それを悟られないようにと郁人は無理して笑顔を浮かべる。


(佐和ちゃんはやっぱり柚太の事が……)


ぼんやりとしていた郁人はメリーゴーランドが動きを止めた事にすら気付かず、

係員の女性に声をかけられるまで固まったままだった。

ようやく出口を通り抜けた所に、佐和と郁人の指示に従って優先パスを持って来た柚太が待ち構えていた。

その2人の姿を見る事が耐えきれなかった郁人は、2人を通り過ぎていきなり走り出した。