キョロキョロと辺りを見回してもいない。


「2人共ー!　早くしないと行っちゃうよ?」



遠くから聞こえる佐和の声。既に彼女は彼らより少し遠く離れた先にいたようだ。

少しでも早くアトラクションを楽しみたいが為の行動ともいえる。

無邪気にはしゃぐ佐和は本当に高校生なのだろうか?　少しだけ冗談交じりで2人はそう思った。

やはり佐和は誰かが見ていないとすぐにどこかへと行ってしまう。


『今行く!』


2人の声が綺麗に重なる。普段なら重なった事にでさえも喧嘩のきっかけにし兼ねない2人だが、

今は休戦状態。きっと2人はその衝動を必死に堪えているだろう。

だからなのだろうか。佐和の元へ走る2人はまるで競争をしているかのよう。結果は同着であったが。