「せ……」

「悪くないって言う? 帰った後、家族にもそう言われたよ」


図星だったらしい咲は、言葉を詰まらせる。

それがあるから自分の風邪が悪化するまで放置していた理由は、それにあったのかと思う半面で。


「確かにそう言おうとしていましたが……先輩は、ただ逃げているだけだと思います。
事故で被害に遭われた方には失礼かもしれませんが、たった1度の偶然じゃないですか。
その1回だけで全てが上手く行かないと決めつけるなんてどうかしています……」

「宮野さんはそんなにボクに力を有効活用して欲しいわけ?」

「ちがっ……そんなんじゃ…………そんなん、じゃ…………」


泣きたい気持ちを堪えた咲の必死な言葉も奏からすれば“いつもされる反応”であった。

その反応は徐々に奏の気持ちをむしばんで行き……。