奏だけではなくその場にいた全員がその音の方を向いた。その目に映った光景。

猛スピードで轟音をあげ走っていた車と、左から来ていた別車線の車と出合い頭に衝突していた光景。

彼の予知の中にはその光景までは浮かばなかった。

徐々にざわめきが増す中で、奏はその場に立ち尽くし動く事も出来なかった。

もし予知通りに女の子が事故に遭っていれば、更に大きな事故が起こる事もなかった。

1つの命は救えた。でもその代償がこれだ。怪我人だけでなく、最悪死者も出ているだろう。


「未来も変えてはいけないんだ……。
どうしよう、ボクが手を出さなければこんな事には……」


握りしめた拳を震わせていた手からは血がにじみ出していた。

この出来事により、奏の自身の力嫌いは悪化する。

そして今後見えた未来を一切変えようと思わないようにしよう、と強く決めたのであった。