「ねえ、お母さんは? はぐれたの? 一緒に探そうか?」

「んーとねえ……あっちでおはなししているよー」

「そっか。じゃあお母さんの所に行ってあげないと。
お話が終わって、君がいないと分かったらお母さん泣いちゃうと思うな」

「え? ママがないちゃうのいやだ……」

「だったら、お母さんの所にいてあげて? ね?」

「うんっ! おにいちゃん、ありがとー」


女の子は素直に笑顔で反対の歩道へ向かうのをやめ、母親の元へと戻って行った。

丁度その時、猛スピードで走る黒い車が通過した。女の子を轢いてしまう車だ。

何とか最悪の事態を避ける事は出来た……かに見えた。

ほっとした様子で女の子が母親のそばにいるのを見ていた時だ。



背後から激しい衝突音が鳴り響いたのは。