たった1度。それは奏が15歳の時である。

自分の持つ力をなかなか証明する事が出来ず、他の受験者よりも遅れて合格を決めた3月中旬。

中学を卒業し、高校入学までの手続きに追われていた頃の事。

突然奏の頭の中にとある未来が流れ込んで来た。

それは明日自分が出掛ける予定の百貨店までの道のりで、

青いワンピースを着た4歳か5歳位の女の子が交通事故に遭うという未来。

悪い事が自分のものであれ、他人のものであれ、見えていても特に変えようとも思わなかった奏。

それは小学校の高学年から自分のこの力が嫌になっていった事も原因の1つであった。

無理矢理とはいえ、自分を想って学院を受験させた家族。

その家族の思いだけはあまり無駄には出来ないと考えた奏は思った。

高校の入学を機に少しでも自分の力を役に立てよう、と。