「それは大変だったね……」

「ええ、まあ……先輩はいつ頃退院されるのですか?」

「2、3日後くらいには出来ると思う。正直、今すぐにでも出て行きたいよ」


そう言って笑う奏はどこか辛そうに見えた。

家族や先生が来てくれるとは言え、大半の時間を同じ空間で過ごし続けて来たのだ。

最初の内は身体の辛さのせいでそれが苦痛とは感じなくても、

回復して行くにつれてそれは苦痛へと彼の中では変わって行っていたのだろう。


「2、3日なんてすぐじゃないですか! もう少しの辛抱ですって……」

「辛抱するのももう限界だよ。……ここから連れ出してよ。本当に」


奏のその一言を、咲は前にも聞いていた。それは親睦会での時の事。

その時にはドキドキとしてしまっていた咲であったが、今は違った。

それまで押さえていた物が溢れだしてしまったのだ。