「湯浅君、顔色悪いですよ? また具合でも悪くなったんじゃ……!?」

「そんな事はないよ。ただ……」


蛍人の言葉を遮るかのように、彼のカバンの中から携帯の振動音が聞こえて来る。

それを取り出し、電話の着信であることを確認すると、咲に小さく“ごめん”と囁き病室から出て行った。

それまでがあっという間の出来事だったせいか、

咲は蛍人を引き止める事も出来ずに呆然扉の方を眺めたまま立ち尽くしていた。


「ど、どうしよう……すぐ戻るよね…………」


蛍人が一緒だと油断していた咲は、まさかこんなに早くに2人きりになるとは予想もしておらず。

奏が寝てしまっているという事が唯一の救いと言うべきだろうか?