(な、何から話せば良いのでしょう……でも湯浅君がいるならば、少しは楽に……)


そう思いながらチラっと蛍人の方を見てみれば、蛍人はやや青ざめた様子で携帯のディスプレイを眺めていた。

何故そんな青ざめてしまっているのか、今の咲にはまだ分からなかった。


「次はー……」

「あ、この次です!」


既に来た事のある咲は次のバス停のアナウンスにすぐに反応してみせる。

何処で止まるのかは聞いていたものの、

すっかり忘れていたらしい蛍人は眠りに入りそうになっていたのか、表情がややぼんやりとしていた。


「もう着いたんだ……早いね」

「混まなければ意外に早い物ですよ?」


程なくしてバスは目的の停留所に止まり、そこで2人は数人の乗客とともにバスを降りた。

降りた直後に吹いた風の心地よさを感じながらも、咲の足は若干震えていた。