「え、えっと……」


普段ならドキドキなんてしない咲。それは完全に2人きりだからという訳ではなかったからだ。

初めて体験する“2人きり”。まずは何から言えば良いかと頭の中で言葉を探す。


「やっぱり来てくれたんだね。……嬉しいよ」


咲が何かを言う前に奏が言葉を発する。それと同時に無理して起き上がろうとしているではないか。

慌てた咲は奏に近付き制止する。彼に触れた時、咲はその熱を強く感じ、相当辛いのだろうと実感する。

顔色も悪く、普段知っている姿からはまるで想像出来ない何とも弱弱しい姿だ。