「落ち着け、落ち着け、落ち着け……」


何度もそう自身に言い聞かせ、あっという間に辿り着いてしまった病室の前。

1度大きく深呼吸をしてから扉に手を掛けたその時だった。わずかではあったが部屋の中から会話が聞こえて来る。

誰かがいる事に気付いた咲は開ける手を止め、その場を去ろうとするが、

中から聞こえてきた奏以外のもう1人の声が聞き覚えのある声だったせいもあり、

その会話にそっと耳を傾けて見る事にした。


「いっつも思うんだけどさ……」

「ん?」

「何で? 何でさ、こうなる事分かっているのに放っておく訳?」

「見えた未来は変えられない、物……だよ」


次には咳をする声が聞こえ、それが続くと聞き覚えのある声が奏を心配する。