「感謝する……歌、だっけ。オレ男だけど良いか?」

<構イマセン。コノ人に歌ヲ聴イテモラエルナラバ>

<自分モ彼女ノ歌ガ聞ケルナラバ、性別ハ気ニシマセン>

「そうか……じゃあ、あともう少しだけ待ってくれ。
そしたら最初のフリータイムが終わって余興始めるから」


悪霊の演技を終えたカップルは更に満面の笑みを浮かべ、旭に感謝する。

旭も笑って見せたが、内心では複雑な気持ちであった。

それは旭が自他共に認める音痴であったからである。

カップルと一旦別れた後に盛大な溜息を吐き、引き受けるんじゃなかったと後悔した。


「男だからやっぱりいい、って言うの期待したんだけどな……
仕方ないか。約束した物は仕方ないし。もうどうにでもなれ! だな」


誰にも気付かれないよう、旭はそう決意した。