「切手くらい構わないけど、これは一体?」

「見て分からないの? 手紙よ。て・が・み!!
なんていうか、その……自分が死んでから家族の皆は苦しんだ。
だから自分が望んでいる事をそのまま書いただけ。少しでも笑っていて欲しいなって……ね」


だからなのだろう。宛先は個人名ではなく“富野(とみの)一家 様”とされていた。

水着幽霊がしたかったのはどうやら家族に手紙を書く事だったらしい。


「富野さんの思いは必ず届けるよ。だから安心して天に昇ってもらえると助かる」

「もし届けなかったら、この子だけじゃなくて貴方も呪うんだからね!? 分かった?」


その捨て台詞を残し、富野もまた寒河江兄妹と同じように天へと昇って行く。

それを手紙を受け取った沢谷と、我に返った旭は見届ける。

旅立ちの日には持って来いの清々しいまでの青空な日であった。