かなこは腰まであるんじゃないかという黒い髪、パッツリと切られた前髪。

淡い桃色の着物姿で、実年齢よりも大人びて見えた。

泰一はかなこの言っていた通りの格好をし、短めの黒髪のぱっと見は好青年の印象を与える。


＜旭、有難ウ。ソノ、コレハ……オ礼トシテ受ケ取ッテ＞


ポカンとしたままの旭の頬に、そっとかなこは口付をする。

その感触は旭には感じられなかったものの、されたと言う事だけは分かった旭は思わず頬を染める。

同じようにかなこも頬を赤く染めているように見えた。


「また会えたら会おうな」

＜エエ、マタ会エタラ……ネ＞


にこっ、と笑みを浮かべて答えたかなこは泰一と手を繋ぐと彼らに背を向け、

その場の空気と同化するように溶けて行き、跡形もなく消えて行った。