「やめろ……って言うかオレ、遠山なんですけど!?
誰だよ、遠野だとか言った奴。オレはお奉行様と苗字が一緒なんだって!」


いちいち質問に答えても恐らくはこの波は消えないだろう。

どうするべきか悩んだ旭は天井を不意に見上げた。

そこには着物を着たカップルらしき幽霊が旭をジッと見つめていた。その目つきは何か困った様子である。

とっさに旭は2人の言葉を聞き取った。


（……女の方が此処で歌を歌いたい、だと?）


病気が治ったら初めて人前で歌を歌う姿を見に行くと、男は女に約束した。

しかし女の初めてのステージの前日に男は突然死んでしまった。