「えっと……遠山先輩の拒んだ理由、分かりました。だからお願いです。遠山先輩と仲直りを……」

「……拒んだ理由が分かったから仲直り? 少しおかしくないかな?」


奏の隣に腰掛けて、必死になる咲を見て奏はどこか面白がっている様子だった。

当の咲はそれを知る由もなく、ただあたふたと必死に言葉を手繰り寄せようとしている。

奏は“ふふっ”と笑って見せると咲を安心させるかのように、


「仲直りはしないよ。喧嘩をした訳じゃないから。
それにもし謝ると言う行動をどちらかがしなければならないって言うなら、
それをするのは旭の方であってボクではないと思うしね」


と。だが咲からすれば“奏がまた黒い笑みを浮かべている”と怯え、

彼女自身の笑顔をひきつらせる要因でしかなかった。暗がりがその奏の怖さを余計に増させていた。