3人が沢谷と話をしている頃。

戻って行く人ごみの中、少し離れた段差のある場所で腰掛けて空を見上げる奏の姿を咲は見付けた。

駆け足で奏の元へと近づく咲。気付かれないように来たつもりが、既に奏にはバレていたようで、


「宮野さん、何か用?」


真っ先に彼は咲にそう尋ねる。自分から声を掛けようとしていた咲は驚きをあらわにし、

奏に何をしているのかを尋ねた。

奏はただ一言、“星を見ているだけ”と即答し、そのまま黙り込んでしまった。

会話がもうなくなってしまった事に咲はどうするべきかと悩み、

頭の中でなかなか整理出来ずにいた言葉をまとまらないまま奏にそのままぶつけてしまう。

この沈黙さえ逃れられれば良いと思った咲の精一杯の行動である。