「遠山先輩、どうしてそんな怪我を……?
それに単独行動をされたと言う事は、何かあったんですか?」

「私があまりにも幽霊に怯えるから、私を置き去りにしてお兄さん捜しをした。そうでしょ?」


里緒が少し不機嫌そうに旭の代わりに答える。

旭はその里緒の言葉を肯定や否定をする訳でもなく、ただ黙って俯いたままだった。

咲と里緒からすれば長い沈黙が続く。

その沈黙を破ったのは旭でもなく、里緒を恐れて遠くにいる蛍人でもなく……。


「置き去りと言う言い方はやや悪い表現ですが、確かに笹原さんを置いて捜しに行かれたのは事実です。
この怪我を負うまでの経緯、旭は言いそうにないので私が代わりに説明します」


この状況を見かねたのか隙を突いて旭と入れ替わったかなこであった。

旭は疲れたのか先程とは違い、暴れる事はせずにただ黙ってかなことの入れ替わりを待った。