退席した理由は2つある。1つは泰一を少しでも早く見つけ出す為。

そしてもう1つは“学院一”の言葉に対して、少し憂うつになってしまった為。


奏も蛍人もいない寝泊まり部屋にただ1人戻り、ぼんやりと窓から外の景色を眺める。

草木が青々しく眩しく輝き、鳥のさえずりが聞こえる中で、

柚太らしき人物が2本の大木を根こそぎ片手で1本ずつ掴んでいるのが見える。

柚太だけではなく、彼と同じタイプの生徒達も同じ事をしていた。


「伐採して良かったのか? 良くない奴だったら、どうするんだろ」


そんな柚太の様子に少しだけ元気を取り戻した旭。口元には笑みがこぼれていた。

自分の身体の中ではかなこが早く探すように訴えている。


「かなこ、悪いけどもう少し休ませてくれ。今は少し気分が悪いから。
気分が悪いまま捜されてもお前も不愉快なだけだろう?」


壁にもたれかかるように座り込み、何をする訳でもなく。ただ時間だけが過ぎて行った。