「……昨日からずっと気になっていたのですが、幽霊さんのお名前って分からないのですか?
昨日頂いた情報の中に、それがなかったような気がして……」

「確かに。お嬢様だけでは一体誰なのか分からないし、捜しようもない」


朝食後の少しの自由な時間。咲は旭に疑問をぶつけ、それに対して郁人も同意する。

旭は聞くよりも本人に手っ取り早く聞く方が良いと思ったのか、

ブツブツと自身の中の幽霊に自己紹介をするように言う。

間もなくして凛とした空気が張り詰め、旭と彼女は入れ替わった。


「私の名前は寒河江(さがえ)かなこです。歳は17。兄の名前は泰一(たいいち)、歳はハタチ。字はこう書きます」


かなこは郁人が持っていた紙とペンで自分の名前と兄の名前の漢字を書く。

本当はもっと表に出ていたかったのだろうが、旭がそれを許さなかった。