桜吹雪く入学式前の春、全てが始まった。


「……で、見付かりましたか?」


片手で鉄製のロッカーを持ち上げている男子生徒が、

床に視線を集中させているスーツ姿の中年男性の背中に話しかけた。


「ああ、あったあった……こんな奥にあったなんてな」


男性はボールペンを手にして安どの様子で生徒に話す。

それと同時に生徒はロッカーを元の位置にゆっくりと降ろした。


「君が通りかからなかったら、多分もっと時間がかかっていたと思う。助かったよ。古瀬(ふるせ)君」