奏は1つ嘘を吐いた。奏は柚太に命令されてなんていないと言う事である。

咲は思わず奏の名前を呼びそうになってしまうが、奏が真っ先に咲の口を塞いだ為事なきを得た。


「命令なら、仕方ないですね……破らせたくはないですから。……行きます」


会長命令と言う言葉が出るやいなや、あっさりと戻る事を決意した蛍人。

奏は会長命令ならば戻ってくるだろうと思ったに違いない。そしてその予想は的中した。


「じゃあ、行こうか。不安な人達に顔を見せてあげて。きっと皆安心するから」


ゆっくりと立ち上がった蛍人の肩を奏は軽く叩き、蛍人を誘導する。

咲は蛍人を戻す為とはいえ嘘を吐いた事にはあまり納得がいかなかったものの、

奏が蛍人を心配していると言う事だけは事実なんだと実感した。