自分の事に構わないで早く避けてと必死に目で訴えるも、それも伝わらないようで。

額からは汗がにじみ出す。徐々に蛍人の集中力は薄れて行き、それから程なくして……。


「……っ!?」


鈍い音共に千智の頭にはボールが当たり、彼女はその場にしゃがみ込む。

蛍人は息を切らせてくず折れ、そのまま意識を手放した。



(……消毒液の匂い?)


どれ位が経過したかは定かではない。

ただ未だに吹奏楽部の演奏する音が聞こえてくる所から、まださほど時間は経っていないのだろう。

目を覚ました蛍人の視線に飛び込んで来たのは白い天井である。

明らかに外ではないと言う事は確かだ。