何も知らない千智は早々と蛍人の隣の席に着くと、

蛍人ににこりと笑顔を浮かべて小さな声で“湯浅君で良いのかな? よろしくね”と。

その言葉に彼は何も返事もせず、ただ頷くだけであった。

この千智との出会いが今後の蛍人の未来が大きく変わる切欠となる事を、この時はまだ誰も知らない。




転校生が来た所で、蛍人の生活は何1つ変わる事はなく。

毎日のように呼び出されては殴る蹴るの暴力を振るわれ、

ちょっととある男子生徒の席を借りただけで“もう二度と俺の席に座るな”と言われたりと。

いじめは相変わらずであった。皮肉にも蛍人はそれに苦しむ事にもすっかり慣れてしまっていた。