毎日のようにアザや傷を作って帰ってくる蛍人に、両親は心配しない訳がない。

ただ何も迷惑をかけたくない蛍人は、

傷の事を聞かれても“階段で派手に転んだ”等、適当にその都度誤魔化していた。

それでも誰かに胸の内を明かしたくて、担任教師と保健医に相談する。

その結果、いじめをやめるように2人は説得したのだろう。

蛍人に対するいじめは相談した翌日からなくなった。

だがいじめは終わらなかった。先生達の監視が緩くなったのを見計らったいじめっ子集団は、

再び蛍人に対するいじめを再開したのだった。それは注意を受けてから僅か3ヶ月後の事である。

蛍人はこの時思った。相談しても説教の効果は長くは続かない。

また相談して2人に迷惑はかけられない。だから卒業まで耐えよう、と。

今ならまだいじめに耐えられるだけの精神が蛍人にはあった。