そわそわと落ち着かない気持ちのまま終了のチャイムが鳴る。食い入るように先生の動きを追っていた葉菜は、こちらを見て口を開きかけた先生に、

「地図、私が持って行きます!」

 先生がなにかいうより先にレンを庇うために叫んだ。前に座るあきと隣りの席のレンが驚いたように振り向いたが、先生に任せたぞといわれるままに手伝った。

「それじゃあここに置いておきますね」

 先生と共に資料室に入った葉菜は、持っていた地図を所定の位置に戻した。そのまま出ていこうとしたところで呼び止められる。

「お前は大滝と付き合ってるのか?」

「………は?」

 なにをいいだすんだ、この人は。

「まさかー! そんなことあるわけないじゃないですか」

 付き合ってるんじゃなくて、勝手に召し使いにされてるだけなんです。

「三度の飯より勉強が好きな委員長が、恋愛に興味あるようにみえます?」

 エロいことには興味津々みたいだけどね。

「そうか。それならいいんだ」

 考え込むように呟くと再びじっと見つめられた。居心地の悪くなった葉菜は、その視線から逃げるように資料室からでた。ひとりになって、ため息をつくと緊張を解く。
 やっぱり。
 やっぱりそうだよ。
 レンに対して探りを入れてきたってことは、なんにせよ彼を怪しんでるってことだ。
 自分の意見は間違ってなかったと、ますますその思いを強くした。
 なんにしても無事に学校を卒業する前にレンが母国、ブリュアイランドに戻されないようにしなくちゃ。
 考えに耽りながら教室に戻る途中、いきなりグイと引き寄せられた。驚いて見上げるとレンだ。

「な、なに?」

 耳元で深みのある声が有無を言わさぬ口調で呟いた。

「今日からお前は俺と帰れ」

 いつものように有無を言わさず、半ば強制的に約束させられた。
 といっても肩を並べて一緒に帰るというわけでもなく、少し先をいく私のあとを何気ない様子で後ろからレンがついてくるといった形になっていた。
 でもなんで私が見張られてるわけ?