世界はどう見ても綺麗だった。いつまでも変わらないと盲信していたそれが崩壊したのは、時間の上に有ったことが原因に外ならない。哀れな幼子の価値観。正しさと美しさを信じて疑わなかったのに。

そんな世界を知りながら逞しく生きる貴方は美しい。何故こんな淋しい場所で力強くいられるのか。そんなことを呟いたら、

君にとってそう見えるだけだよ、

と返された。なるほど。自分以外の人のことなんて所詮全て理解出来ないから、私が思っている貴方は必ずしも貴方自身ではなくて私にとっての貴方、か。

まあ、どうしようもないし、それならそれでいいかな。

そう思って抱きついた。覗き込んだ貴方の瞳には、私が映っていて、それは何も語らなかった。



(君は人間らしいね)
(どうして?)
(まだ人に憧れていたいんだろう?)
(…だって、私は人間だもの)