輝side

キリトと別れた後、レイの病室へ戻った。

そこには、光がない、レイの姿。

抜け殻のように座っている。

「レイ…。」

名前を呼ぶと、レイはゆっくりと振り返った。

「あなた、さっきいた人…だよね?」

不思議そうに問いかけてくる。

「そう。水谷 輝。あんたの、彼氏だよ。」

「え……そう、なの?」

「そう。あんたは、俺の彼女。」

レイは、驚いていた。

そりゃ、当たり前だ。

そもそもが嘘。

俺は、生まれて初めて、レイに嘘をついた。


「おい。」

声の主は、キリト。

扉の所で立っていた。

「輝……てめぇ………!!」

「キリト、こっちで。」

怒り狂ってるキリトを無理矢理引っ張って廊下に出た。

そこから、人気のない場所へ。

「何考えてんだ!」

手を離した瞬間、怒鳴りつけてくる。

「レイが記憶ないの利用して、レイに嘘つくなんて!!」

さっきまで泣いていたせいだろう。

目が真っ赤になっている。

「あれしかなかったんだ。」

「はぁ?」

「お前、知らなかったろ。レイ、昔からずっとお前が好きだったんだよ。」

キリトは、力が抜けたように怒りが静まった。

「俺は、レイの相談をずっと受けてた。俺はレイが好きだ。」

「そんな……。」

「俺の気持ちが分かるか?ずっと、永遠に一方通行なんだよ。だから、今の状況を利用した。」

キリトは、目線を逸らして、口をパクパクさせる。

「俺は謝るつもりはない。レイの事だって、お前よりも幸せにできるさ。」

それだけ言って、キリトの元を去った。