「キリト。」

後ろで輝の声がする。

だけど、振り向けなかった。

こんな泣き顔は見せられない。

「レイ、検査に行ったよ。」

「そっか…。」

「俺だってさ、悔しいよ。」

輝の声が妙に軽く聞こえた。

それにムカついて、気づけば輝の胸ぐらを掴んでた。

「輝……。」

輝は、眉間にシワを寄せて、口を一文字にして、涙を堪えてた。

「俺だって……。俺だって近くにいたかった……。」

輝は、震えた声でそう言った。

シャツから手を離す。

その瞬間、全身の力が抜けた。

「キリト!?」

「ははっ…ごめん。俺、ダメだわ。」

「どーゆー…。」

「ごめん。やっぱ1人にしてくれ。」

座りこんだまま、手を地面につけると、コンクリートの冷たさが、手を伝って全身に伝わった。

まるで、氷のよう。

「…………わかった。」

輝は、病院へと戻って行った。