病院についてから既に9時間が経過していた。

輝の到着はもう少し遅れるらしい。

今は梓の病室で様子を見ている。

呼吸器を付けて眠る梓に、いつものような明るさは、ない。

「じゃあ梓、俺レイの所行ってくるな。」


手術室前にいるレイの家族はボロボロになっている。

お父さんお母さんにはクマができている。

柚葉ちゃんも疲れて寝てしまっている。

レイが運ばれてから11時間。

ふと見た手術室のランプが、消えた。

「終わった!?」

「えっ!?」

お父さんお母さんが立ち上がる。

ゆっくりと、手術室の扉が開く。

中からは、包帯をグルグルに巻き人工呼吸器をつけたレイが出てきた。

「レイ!」

3人でレイに駆け寄る。

顔は傷だらけで、血色も悪い。

「すいません、遅くなってしまって。」

レイを運ぶ看護師の後ろから、手術をしてくれた先生が出てきた。

ガラガラとレイは運ばれていく。

ついて行こうとしたけど、無菌室?にしばらく入るからと断られた。

「先生…レイは、大丈夫なんですか?」

「手術は成功しましたが、頭をかなり強く打っていまして、後遺症など、出てしまうかもしれません。」

「後遺症……。」

「とにかく、目を覚ますまで安心はできません。容態が急変して、最悪の場合も……覚悟して下さい。」

「………そんな……………。」

レイのお母さんは泣き崩れた。

最悪の場合ってなんだよ。

それって、レイが、死ぬって事かよ…。

俺はレイが運ばれた病室へ走った。

途中途中で怒られたけど、気にしてる暇はない。

無菌室はガラス越しでしか会えない。

ガラスの向こう側にいるレイは、俺の知ってるレイじゃない気がした。