……何で……居るの?


「悪いけど、他当たって?コイツは渡せない」



勝手な事言わないでよ


私は頭上で交わされる二人の声も耳には入らず、ただ怒りに肩を震わせていた


「やっと帰って来たと思ったら、何やってんだよ……」


視界の端に蜂谷くんが立ち去る姿を捉えた直後、背後からは呆れた声が掛けられた



「余計な事しないでよ!!」



私は肩に乗せられていた滝沢先輩の手を払うと彼を睨み付けた


「……七瀬?」


振り返ると滝沢先輩が驚いた顔で私を見下ろしていた



「余計な事しないで!!私だって前に進みたいの!瞬の事忘れて…幸せになりたいの!」



お酒が入ってる所為か私の口からは次々に言葉が溢れ落ちる

滝沢先輩は私が感情を露にした事に驚き戸惑い口を挟めずにいた



だってズルいじゃない

滝沢先輩は前に進んでるのに


私はいつまで経っても立ち止まったまま



「私だって幸せになりたい!夜、眠るのが怖くて……目を閉じるのが怖くて……、けど“これは夢だよ”って言って欲しくて……そんな事あるわけなくて……」



―――置いていかれたくない