沸騰したお湯が、熱くなった鉄のやかんに触れ
ジュッと音がした。


その音に、灰くんの肩がビクッと反応した。



灰くんは恐る恐るわたしの顔を見上げた。


恐怖に怯えた色の瞳。



「フフ……その目…

好きよ」


わたしは、ゆっくりやかんを傾けた。


灰くんは、首を振りながら、後退した。



「無駄よ」

わたしの言葉と同時に

熱されたお湯が

灰くんの身体に降った。



「あ゙ぁあ゙ぁ゙ああァ゙ァ゙ア゙ッ!!!」


悲痛な叫びが

部屋にこだました。


「フッ…フフッ……アハハハッ!!」


わたしはその悲鳴を聞き、狂ったように笑った。


『嫌!やめて!
灰くんを傷つけないで!!』


『わたし』が、心の中で叫ぶ。



馬鹿ね。

今、灰くんを傷つけているわたしも
『わたし』なのよ。


愛し過ぎたが故に狂ったわたしを生んだのは
『わたし』でしょう??


わたしは、心の中で必死にわたしを抑えようとする『わたし』に
冷たく言い放った。



目の前ではぼろぼろになった灰くんが
自らを抱き締めるように蹲っている。


「どお?灰くん。
これでもあなたは、わたしを
美しいと、綺麗だと言える?」