わたしは、頭を抱えてしゃがみ込んだまま

ベッドの上で寝息をたてる灰くんを見た。


細い首を見ると、また壊したくなる。

「ダメ…」

そう思っているのに


そっと、灰くんの首に手をかける自分がいた。



「……ん…っ……ぐ…ぅ」

だんだんと息が出来なくなっていく灰くんは

首を左右に振って、必死に息をしようとした。



ダメ…

ダメじゃない。






「動かないでよ灰くん。
首……絞めれないじゃない…」



自分の言葉に

驚いた。


考えとは裏腹に、体と口は勝手に動く。


『本物のわたし』がやっていることじゃない。

わたしが

『わたしの意志』でやっているのだ。



ゆっくりと手に力を込めて行く。


灰くんの目には涙が滲んでいた。



「…ぐ…ッ……苦…し」


うわごとのように呻いた灰くんの声に

わたしはやっと我に返った。


否、また『舞台』に戻ったのだ。

わたしは再び『お嬢様』のわたしを演じ始めた。


「灰くん……!!」

「ッ…ハァ……ハア…
おは…よ……るみ」