このときはまだ、自分の感情の正体に気付かなかった。

しかし

灰くんが我が家に来て、一週間経った夜


その日は、両親の用事で、パーティーに出かけていた。

もちろんそこには灰くんもいた。


黒のマーメイドラインのドレスを着ていたわたしは

会う人々に、中学生に見られた。


「…わたし…そんなに老けて見えるかしら?」

落ち込むわたしに、灰くんは大笑いしながら言った。


「瑠美は老けてんじゃないって!!
瑠美はすっごい綺麗なんだよ」

「わたしが、綺麗なわけないじゃない…」

「綺麗だよ!!
ほんとに…
ほんとにすっごい美人なんだよ?
自覚しようよ」



このとき

心が淡く痛んだと同時に


もう一人のわたしが


心の中で、産声を上げ始めた。







『……壊したい』