今から七年前の、クリスマスイブの夜…

両親と食事をして、プレゼントを買って歩いていたとき
わたしは、両親とはぐれてしまった。


一人街を彷徨っていると、明らかに危なそうな男の人たちに囲まれた。


恐くて、逃げることも出来ないわたしを

たまたま通りかかった灰くんが助けてくれた。


「…あ…ありがとうございます。
助かりました…。
あの、お礼がしたいので…お名前とご住所を…」

「住所なんてないよ。
俺、孤児院から抜け出して来てっから」


灰くんは、グレーの瞳をわたしを凝視していた。


「じゃ、じゃあせめてお名前だけでも…」

「名前もない。
名前なんて付けられる前に捨てられたから…。
施設の奴らには"サクラギ"って呼ばれてたけど。

…つーか、あんた良いトコのお嬢さんだろ?
俺みたいな野良犬ほっといて、両親とこ帰んな」