そう言い終わると同時に

わたしは目を開けた。


目の前では、灰くんが俯せた体勢で気を失っていた。


そっと灰くんの頬に触れると、彼はピクンと反応した。



「……る…み…?」

「…そうよ…。…わたし」

「…瑠美…」


灰くんはそっとわたしの頬に手を触れた。


「ごめんなさい。
灰くん…わたし……」

「大丈夫…」


灰くんは無気力な笑顔を見せた。


「…ちょっと待ってて…」

わたしは暗やみのなか、かすかな光を頼りにキッチンに向かい

フェイスタオルを冷水に付けた。


そして、灰くんのもとに戻ると、それを灰くんの体の傷に優しく当てた。


「…ッ…う」

灰くんは小さく声を上げた。


「ごめんなさい…痛かった…?」

「……少し…」


タオルを見てみると、赤い染みが着いていた。

「血が…出てるの?」


灰くんは何も言わず、ただ下を向いていた。



なぜ、こんなことになってしまうのだろう…。


わたしはただ

灰くんが好きなだけなのに…。


愛しているだけなのに


純粋な愛情が

歪んだ愛情へと変わり


いつしかそれは、異常な迄の狂気へと姿を変えてしまった。