扉が開いたことに気づいた時にはもう遅かった。すでに愛里は床に倒れこんでいた。
見上げるとそこには母親の幸の姿があった。幸は愛里の背後から愛里を蹴り跳ばしていたのだ。
愛里は恐怖を感じ半泣きになりながらもよちよち歩きで幸から逃げようとした。 
だが幸は愛里の長い綺麗な髪を引っ張り上げ丁度いい高さまで上げて愛里の顔に自分の顔を近づけた。
「何でこぉなってるかわかるよねぇ。」
うなずこうとしたらうなずく前に幸に掴んでいる髪を振りおろされた。愛里はまた床に倒れこんだ。もうこれ以上抵抗しても無駄だと分かっていたから動こうとはしなかった。
「何でそんなこともわからないの!!」
【ドン パチ ドカ バン ドン ドカ...】
何回殴られ蹴られたか分からない。とにかく長かった。気が遠くなりそうだった。このまま死んでしまいたいと思うほど。
どれくらいたっただろうか。全く分からない。ただ、目の前はかすんでいた。もう一度髪をさっきの高さまで引っ張り上げられてまた顔の近くで言われた。
「蓮ちゃんとは仲良くするんですよ。」
それだけ言って幸は自分の部屋へと帰って行った。