「『いく』には、3つの意味が込められてるんだ。」
「3つ…?
2つだと思ってた…。」
『行く』と、『逝く』
「たぶん、俺と亮介しか知らない。」
彼女の…こと…
「郁未。」
「え…?」
「郁未っていうんだ。前のボーカルの名前。」
郁未…i、だ。
綾瀬のa
郁未のi
亮介のr
で、airか…。
あたしが入ったから意味の無い単語になっちゃった。
…いや、あたしが入っても、airの名前は変えなかったんだ。
あたしの入る余地は無いってこと…。
「この曲は、俺がairとして初めて作詞作曲した曲なんだ。初めて、俺が全部一人で作った。」
全部…一人で。
ああ、そうか。
何か、解った気がする。
綾瀬にまとわり付いているもの。
「行こう、綾瀬。
みんなが待ってる。」
そう言って、あたしは手を差しのべた。