「今何してるの?
僕は歌ってるよ
君のためにボクらのために
僕は歌っているよ…」

「詩花…。」

切ない顔をして、綾瀬はあたしを見つめた。

「彼女のことを想って…歌ってたんだよね…?」

涙が込み上げてきた。

だけど決して流さない、そう決めた。

綾瀬は苦しそうに顔を歪める。

「大好きだった…。」

震える拳が、愛しさを語っていた。

「一生…あいつの隣で奏でたいって…あいつとハモっていたいって…そう…思ってた…。」

途切れ途切れの言葉を繋いで、綾瀬は本心を打ち明けてくれた。

「歌えなくなっても。…傍に居てくれるならそれでいいって思ってた…。
俺の歌を聴いていてくれるなら…、俺が歌う曲に歌詞をつけてくれるなら…、隣で笑ってくれるならっ……それで良かったのに…っ」

蹲ってしまった綾瀬の肩は震えていて。

背の高い綾瀬が、小さい子どものように思えた。