ず…ずず…

あたしはトイレのドアに背を預け、汚いとも思わずにへたり込んだ。

「ハァ…」

何やってんだろ。

何ヒロインぶってんの。

馬鹿じゃないの?

自分に嫌気がさす。

弱い自分が嫌い。

出来ない自分が嫌い。

貫き通せない自分が嫌い…。


ギュッと瞑った瞳からは涙が流れ落ちた。

「詩花…?大丈夫か?」

トイレの外から、綾瀬の心配そうな声が聞こえた。


…逃げてちゃだめだ。

ちゃんと向き合わないと。

綾瀬自身も救われない。

綾瀬は、彼女を殺したという呪縛に身動きがとれなくなってる。

あたしが解き放ってあげないといけないんだ…。