ステージの上では、先に来ていた綾瀬がギターを弾いていた。

綾瀬の姿を見れば逃げ出したくなる。

これから歌うのは、あたしじゃない。

本当は苦しい。

あたしが想っているのは綾瀬なのに。

あたしは綾瀬になりきって、彼女への想いを歌うんだ。

「詩花、遅ぇぞ!」

あたしに気付いた綾瀬は、いつもの笑顔であたしに言った。

立ち止まってしまった足を動かして。

あたしはステージに上った。